なぜそうなるか

金を売ったら税金はかかる?——国税庁は金地金を原則「総合課税の譲渡所得」とし、買取業者には200万円を超える支払いの調書を税務署へ出す決まりがありました

金の値段が高いという話を耳にして、家にある金貨や地金、使わなくなった指輪のことを思い出す人は多いと思います。

売れば現金になる。そこまでは分かりやすいのですが、その先で気になるのが税金の扱いです。売った金額に丸ごと税金がかかるのか、手続きは要るのか。

買取店の店頭では、税金の話まで詳しく説明されないこともあります。何も言われなかったから大丈夫なのか、あとから何かが届くのか、判断の手がかりがありません。

そこで、国税庁の「タックスアンサー」から、金地金の譲渡を扱うページと、譲渡所得の対象・計算を扱うページの3本を開きました。

あわせて、買取業者が税務署に出す「支払調書」について、国税庁の手続の案内と報道発表も読みました。記事の中の数字は、どれも出典の書き方のままです。

手元の金にどの扱いが当たるか、申告が要るかどうかは、この記事では判断しません。持っている期間や金額、ほかの所得によって変わるので、最後は税務署や税理士に確かめる前提で読んでください。

この記事でわかること
・国税庁は、金地金を売ったときの所得を、原則として総合課税の譲渡所得としている
・所有期間が5年以内なら短期、5年を超えれば長期で、計算の式が変わる
・譲渡所得には、その年の合計に対して50万円の特別控除がある
・生活に通常必要な動産の譲渡は課税されないが、1個または1組が30万円を超える貴金属などは外れる
・金地金等の売買を業とする者は、200万円を超える対価を支払うと、税務署に支払調書を出す

金地金を売ったときの所得は、何に分類されるの?

金を売って得たお金は、給料とは別に扱われるの?

国税庁のタックスアンサー No.3161 は、原則として「譲渡所得」に当たり、給与所得などと合わせて総合課税になるという案内です。

「No.3161 金地金の譲渡による所得」の概要の一文は、次のとおりです。

金地金を売ったときの所得は、原則、譲渡所得として、給与所得など他の所得と合わせて総合課税の対象となります。

「合わせて」という言葉のとおり、金の譲渡で得た所得は、給与などと合算して税額を計算する側に置かれています。株式のように別枠で計算する扱いとは違う、ということです。

同じページは、原則から外れる場合も1つ挙げています。

金地金の譲渡が営利を目的として継続的に行われている場合には、その実態に応じて事業所得または雑所得となります。

売り買いをくり返している場合は、譲渡所得ではなくなることがある、という書き方です。どこからが「継続的」に当たるのかは、このページには書かれていません。

持っていた期間で、計算はどう変わるの?

長く持っていた金と、最近買った金で違いはあるの?

所有期間が5年を超えるかどうかで「長期」と「短期」に分かれ、長期のほうは所得の金額の2分の1が課税の対象になります。

5年が境目になる

譲渡所得の計算を扱う「No.3152 譲渡所得の計算のしかた(総合課税)」は、長期と短期の分かれ目を次のように説明しています。

長期譲渡所得となるのは、所有期間が5年を超えている場合で、短期譲渡所得となるのは、所有期間が5年以内の場合です。

No.3161 の計算式でも、所有期間が5年を超えるものは、特別控除を引いたあとの金額に「1/2」を掛ける形です。同じ譲渡益でも、5年を超えて持っていたかどうかで、課税される金額が変わることになります。

50万円の特別控除

No.3161 の注には、特別控除の範囲がこう書かれています。

譲渡所得の特別控除の額は、その年の金地金の譲渡益とそれ以外の総合課税の譲渡益の合計額に対して50万円です。

控除は1回の売却ごとではなく、その年の総合課税の譲渡益の合計に対して50万円です。

当方の計算で1つ例を置く

ここからは当方の計算です。所有期間が6年の金地金を売り、取得費と譲渡費用を引いた譲渡益が80万円で、その年にほかの総合課税の譲渡益が無かったとします。No.3161 の長期の式に当てはめると、80万円から50万円を引いた30万円に2分の1を掛けて、課税される譲渡所得の金額は15万円になります。

この15万円がほかの所得と合算されて、税額が決まります。実際の税額は、給与などほかの所得の額によって変わるので、ここでは出していません。

指輪やネックレスなど、金の製品を売った場合は?

使っていたアクセサリーを売るのも、同じ扱いなの?

No.3105 は、生活に通常必要な動産の譲渡は課税しないとしたうえで、1個または1組が30万円を超える貴金属などはそこから外していました。

「No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法」は、譲渡所得の対象となる資産の例に、金地金や宝石を挙げ、そのうえで課税されない譲渡所得の1つめに生活用動産を置いています。

家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産の譲渡による所得です。

続く一文が、貴金属の扱いです。

ただし、貴金属や宝石、書画、骨とうなどで、1個または1組の価額が30万円を超えるものの譲渡による所得は除きます。

30万円という線は「1個または1組の価額」で引かれているので、まとめて売った合計額の話ではありません。手元のアクセサリーが「生活に通常必要な動産」に当たるかどうかは、このページからは判断できないので、この記事では決めていません。

買取業者は、税務署に何かを出すの?

お店で売ったことは、税務署に伝わるの?

金地金等の売買を業とする者には、200万円を超える対価を支払ったときに「支払調書」を税務署へ出す決まりがあります。

国税庁の手続の案内「F1-42 金地金等の譲渡の対価の支払調書(同合計表)」は、手続の対象者を次のように書いていました。

国内において金地金等の譲渡の対価の支払をする金地金等の売買を業として行う者

提出の時期は「支払確定日の翌月末日」とされています。金額の線は、国税庁の平成27事務年度分の報道発表「金地金等に係る譲渡所得の調査状況」の注に、次のとおり書かれていました。

「金地金等の譲渡の対価の支払調書」は、平成24年1月1日以降、金地金等の売買を業として行う者が、国内においてそれらの譲渡を受け、200万円超の対価を支払う場合に、税務署に対して支払調書を提出することが義務付けられたものです。

調書を出すのは売った人ではなく、買い取った業者の側です。この線は業者が調書を出す義務の線で、No.3161 が示す譲渡所得の扱いに、金額の下限は書かれていませんでした。

この記事で確認したこと

金を売ったときの税の扱い
・金地金の譲渡による所得は、原則として総合課税の譲渡所得
・営利目的で継続的に売っている場合は、事業所得または雑所得になる
・所有期間5年以内は短期、5年超は長期で、長期は2分の1が課税の対象
・特別控除は、その年の総合課税の譲渡益の合計に対して50万円
・生活用動産は非課税だが、1個または1組30万円超の貴金属などは除かれる
・買取業者は、200万円超の対価を支払うと税務署に支払調書を出す

No.3152 は取得費を「一般に購入代金のこと」と説明しています。売る前に、購入したときの金額が分かる書類があるかを見ておくと、計算の出発点がそろいます。

よくある質問

金の積立で得た利益も、同じ譲渡所得ですか

No.3161 は、金投資口座や金貯蓄口座からの利益を、金地金の現物の譲渡とは別に扱っています。ページの記述は次のとおりです。

金投資口座や金貯蓄口座などからの利益は金地金の現物の譲渡とは異なり、実態は金融取引に近いことから、金融類似商品の収益として一律20.315パーセント(所得税および復興特別所得税15.315パーセント、地方税5パーセント)の税率による源泉分離課税となります。

同じ「金」でも、口座で持っているか現物で持っているかで扱いが分かれます。

買ったときの金額が分からない場合はどうなりますか

今回読んだ3本のタックスアンサーには、取得費が分からない場合の扱いは書かれていませんでした。No.3152 は取得費を「一般に購入代金のこと」と説明しています。分からない場合の扱いは、税務署に確かめてください。

支払調書が出なければ、申告しなくてよいのですか

今回読んだページには、支払調書の有無と売った人の申告を結びつける記述はありませんでした。F1-42 の手続の対象者は業者の側で、No.3161 は金地金の譲渡による所得を原則として譲渡所得としています。申告が要るかどうかは、税務署に確かめてください。

この整理が変わる条件


出典

金を手放す前に、税の扱いを国税庁の最新のページで確かめ、迷ったら税務署か税理士に相談してください。

当方が上の出典を引いて確かめた日:

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